「ストレスを感じる」「ストレスが溜まった」など、私たちは日常的に「ストレス」という言葉を使っています。ストレスという言葉を使うときは、緊張を感じていたり、イライラしていたりなど、何か負担を感じているときに使う場合が多いのではないでしょうか。「ストレス」が心にどんな影響を与えているのか、心理学の観点から解説します。
ストレスとはなにか
ストレスという言葉はいろいろな業界で使われている
「ストレス」という言葉は実はいろいろな業界で使われています。例えば、鉄板を両端から押したとすると、鉄板は曲がります。力を緩めると鉄板は元の状態に戻ります。鉄板は歪んだ状態から元に戻ろうとする反発力を持っているため、力を緩めると元の状態に戻るのです。一方で、鉄板に力を加え続けたとします。反発力を上回る力を鉄板に加え続けたとすると、鉄板は折れてしまうでしょう。工学の領域では医学や心理学でストレスという言葉が使われる以前から物質が歪みに反発する状態のことをストレスと呼んでいました。心理学におけるストレスは鉄板を私たちの心と置き換えることで理解することできます。
ストレッサーとストレス反応
私たちの心も外部から何かしらの刺激を受けたり、プレッシャー等の心理的な負担がかかったりすると気持ちが沈んでしまったり、イライラしたりします。この外部からの刺激やプレッシャーのことを「ストレッサー(ストレス要因)」といいます。そしてストレッサーによって気持ちが沈んだりイライラした状態になることを「ストレス反応」と言います。私たちは、ストレッサーとストレス反応をことを区別することなく大きく「ストレス」と呼んでいるのです。
日々生活していると私たちは、さまざまなストレッサーに接することになります。先ほどの鉄板のように軽い力であれば、反発力によって元に戻ることができますが、大きな力がかかると折れてしまいます。私たちの心も同じで、大きなストレッサーに対してうまく対処できないと、ストレス反応によって病気になってしまうこともあるのです。
ストレス反応の3段階
ストレス反応には3つの段階があると言われています。この分類は現代のストレス研究の発端の一つと言われるセリエの研究によるものです。それぞれ見ていきましょう。
第一段階は、警告反応期と呼ばれる段階です。警告反応期はストレッサーに直面することで一時的に抵抗力が下がる「ショック相」と、それからストレッサーに立ち向かおうとする「抗ショック期」に分けられます。
第二段階は、抵抗期です。ストレッサーに対して抵抗している段階です。抵抗力が発揮されているため、外からみると安定しているように見えることも多いですが、実際には継続的に抵抗している状態なので、本人は非常に頑張っており、無理を感じていることもあります。
第三段階は、疲弊期です。抵抗期でストレッサーに対して抵抗するためにエネルギーを使っていくと、徐々にエネルギーが失われていきます。そして抵抗期に入ると急速に抵抗力が失われます。この「急速に」というのが怖いところで、昨日まで元気そうだったのに、という方が急にメンタル不全に陥ったり、燃え尽きたようになるのは、疲弊期に入り急速に抵抗力やエネルギーが失われたからだと考えられます。
ストレスにもよいものと悪いものがある
私たちは日々さまざまなストレッサーにさらされていますが、その反応は人それぞれ違います。例えば、仕事でとあるプロジェクトを任されたときに、ある人はやりがいを感じたり、またある人はプレッシャーを感じたりすることがあります。このようにストレス反応には個人差があるのです。同じストレッサーでも、本人の受け止め方次第で、やる気につながったり、負担に感じたり。ストレッサーをよい刺激と捉えた場合を「ユーストレス」、苦痛な刺激と捉えた場合を「ディストレス」と言います。ストレスにもよいストレスと悪いストレスがあるのです。
よいストレス(ユーストレス)とは
全くストレスのない生活を考えてみましょう。刺激が全くない生活、それはそれでつまらない生活だと思いませんか?適度なよいストレスは人生にやりがいや張りをもたらしてくれるものなのです。ストレス研究の第一人者であるセレスは「ストレスは人生のスパイス」という言葉を残しています。
悪いストレス(ディストレス)とは
本人が処理できないような過度のプレッシャーや負担は、不安やイライラ、抑うつなど、精神不調につながります。ディストレスに対しては、なるべく早くうまく対応する必要があります。
ストレスとうまく付き合うには
よいストレスは人生にとって必要なものだと言えますが、悪いストレスにはうまく対処していく必要があります。メンタルヘルスの領域では、自分自身でストレスに対処していくことを「セルフケア」と言います。ストレスをうまく付き合うには、セルフケアをしっかりと行うことが必要です。
また、セルフケアなの中でもストレスに対処するための行動を「コーピング」と言います。ストレス耐性がある、ストレスに強いと言われる人たちはこのコーピングをうまくやっていると言えます。